研究テーマ一覧 | 研究内容・実施機関・研究成果



生体センシング技術を活用した次世代精密家畜個体管理システムの開発(2014-2018)

1.繁殖成績向上のための精密個体管理システムの開発
2.高度飼養管理と生産病防除のための精密個体管理システムの開発
3.次世代精密家畜個体管理システムの実現に向けた調査研究





1.繁殖成績向上のための精密個体管理システムの開発
    テーマリーダー:農研機構 動物衛生研究部門 吉岡 耕治


 (1) 腟内及び体表温センサを用いた受胎向上技術の開発
 
 研究テーマ内容
 腟内に留置が可能な小型(長さ120mm×径20mm以下)で腟内の電気抵抗値及び温度を連続的(30分毎のデータ取得で1ヶ月程度)に計測できる新規小型無線腟内センサ及び機能解析に必要な基盤技術を開発する。このため、低消費電力な電気抵抗値測定法を考案し、腟内電気抵抗値及び温度センサを試作して腟内に留置するための形状を検討する。また、腟内に留置するための補助器具や安定的に動作する構造を確立し、実用型とするための最適化を行う。さらに研究項目2(1)で開発される首輪中継器が高い成功率で受信できるシステムを開発する。
 また、腟内センサ及び研究項目2(2)で開発される体表温センサの利用により、排卵時期を予測して人工授精のタイミングを決定する授精適期判定法を考案する。すなわち、開発されたセンサを腟内に挿入、留置する方法を検討するとともに、実際に牛からデータを取得する場合に起こる問題点を抽出する。併せて腟内センサ留置における腟内の炎症反応なども調べ、より侵襲の少ない手法としての改善を検討する。ついで、腟内及び体表温センサからデータを取得する牛の生殖内分泌動態及び卵巣の経時的変化を調べ、センシングデータとの関連を明らかにする。さらに、腟内あるいは体表温センサのデータから排卵を予察する方法を検討し、センシングデータに基づく、授精適期判定法を開発する。
 上記の結果を踏まえて腟内センサの性能や形状などに改良を加え、生産者段階での使用に適した実用型腟内センサ及び腟内センサを簡便に挿入するための器具を開発し、腟内センサの製品化を行う。
 また、腟内センサから得られる電気抵抗値及び腟温、ならびに体表温センサから得られる繁殖雌牛における体表温度の変動を解析し、腟内電気抵抗値、腟温、ならびに体表温度のデータと排卵との関連性を明らかにするとともに各データと排卵とを関連付ける特徴量を抽出する。さらに、分娩予知に関しても、上記と同様に特徴量を抽出する。次いで、得られた特徴量に基づき、授精適期及び分娩時期を検知するアルゴリズムを開発する。さらに、これらの時期が明確に判定できるよう、ユーザーインターフェースを考慮したソフトウェアの開発を行う。

 研究項目開発される腟内及び体表温センサの利用により、実規模農場の牛群において排卵時期を予測して人工授精のタイミングを決定する授精適期判定法を開発する。具体的には、酪農飼養形態において、センサを利用する際に起こる問題点を抽出する。ついで、腟内及び体表温センサからのセンシングデータと牛の生殖内分泌動態及び卵巣の経時的変化との関連を明らかにする。さらに、腟内あるいは体表温センサのデータから排卵時期予測手法を検討し、センシングデータに基づく授精適期判定法を開発する。また、現在市販されている無線型歩数計と本研究で考案・開発されたシステムにおける授精適期判定精度の比較を行い、無線型歩数計よりも精度の高いシステムに成熟させる。さらに、分娩から次回受胎に至るまでの繁殖管理において、センシング技術を利用した繁殖機能のモニタリングを実施し、実規模農場における高度な授精適期判定法の確立と、酪農繁殖管理システムへの適応性を構築する。また、開発した授精適期判定システムを寒冷地生産者段階へ導入し、実証試験を行う。

 発情周期に観察される卵胞波の卵胞を吸引する生体内卵子吸引、卵胞刺激ホルモン製剤を用いた多排卵処置における発情及びGnRH投与による排卵誘起処理が体表温度、腟内電気抵抗値や腟温にどのように作用するかを、開発される腟内及び体表温センサを用いて明らかにする。また、各人為的な処理を経て採取された卵子を、リアルタイム培養細胞観察装置を用いて、各処理別に個別に培養し、体外受精後の胚の発生形態の特徴を明らかにする。センシングデータや卵子の発生形態から、卵胞発育動態、発情発現、卵子成熟などを総合的にモニタリングすることが可能か検討する。これらの成果から、予測に基づいた多排卵及び排卵誘起処置の開始時期や卵子の採取時期の判定法を検討し、多排卵処置における正常胚数の向上や発生能の高い排卵直前の成熟卵子の採取及び体外受精による胚生産の向上を実現する技術を開発する。
 腟内及び体表温センサを用いて、温暖地域の乳牛における暑熱期、寒冷期及び温暖期(移行期)の変動を解析し、発情発見が困難な暑熱期においても授精適期を検知できる授精適期判定法を開発する。また、体表温センサを用いたモニタリング法を、簡易型早期妊娠診断に応用する。さらに、腟内及び体表温センサを用いたモニタリング法を、温暖地域の乳牛における受精卵移植のレシピエントとしての適否判断技術や、肉牛の生体内卵子吸引における卵胞発育動態の把握などによる効率的な体外受精による胚生産技術へ応用する。また、夏季の気温が高い地域において、発情行動が発見しにくい繋ぎ飼い式の酪農生産現場へ導入し、実証試験を行う。

 研究実施機関
  • 農研機構 動物衛生研究部門
  • 産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター
  • 富士平工業
  • 徳島大学大学院
  • 五島育英会 東京都市大学
  • 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
  • 酪農学園 酪農学園大学
  • 農研機構 畜産研究部門
  • 広島県立総合技術研究所 畜産技術センター 
 
 研究成果

 (2) 高機能センサを用いた周産期管理の省力化に向けた技術の開発
 
 研究テーマ内容
 現在、牛の分娩警報装置として、複数の腟内留置型温度センサが市販されている。これらの装置は、胎子娩出直前の脱落による温度低下を主な指標としており、分娩時刻を事前に正確に予測することはできない。そこで、開発される腟内センサ、ルーメンセンサ、体表温センサ等を活用し、分娩に向けた生体機能の変化をより的確に捉えることにより、分娩時刻予測精度の向上を図る。また、予測精度のさらなる向上を目指し、分娩発来の信号となる内分泌動態を捉えるためのホルモンセンサの開発に取り組む。その上で、分娩予定前にプロスタグランジンやデキサメサゾン投与による分娩誘起を行い、上記センサの計測値(分娩までの進行度)と分娩誘導時間の関係を明らかにし、その結果から通常労働時間(6:00~20:00)に分娩を誘導する条件を明らかにする。

 牛に装着可能な温度及び電気抵抗値センサは授精適期の判定や疾病管理だけでなく、その他の個体管理にも幅広く応用可能と思われる。そこで、開発される腟内センサ及び体表温センサを利用して、分娩時刻及び産後生殖機能回復時期の予測技術を考案する。
牛では分娩の進行に伴って破水が起こり、胎子が娩出される。これらのイベントに伴い局所の体温や粘液の電気抵抗値に変化が生じると考えられる。本課題では腟に留置したセンサの計測値変化と分娩との関係を明らかにし、センサの分娩監視システムとしての機能を評価する。分娩直前(予定日数日前)に腟内にセンサを留置し、温度及び電気抵抗値をモニタリングするとともに血液中のホルモン濃度の推移を測定し、センサ計測値が分娩の進行やホルモン値の増減に伴い変化を生じるか検討する。
 また、分娩後、損傷した子宮や腟は次の繁殖に備え、その機能を速やかに回復するが、細菌の感染や栄養状態によってはその修復は遅れ、発情回帰の遅延等の繁殖障害を引き起こすと考えられる。子宮・腟の産後感染は局所的炎症反応や感染性粘液の分泌を引き起こすため、腟内留置センサを利用することにより、これまで発見することが困難であった産後の子宮回復状態をモニタリングできる可能性がある。本課題では分娩後の牛の腟内にセンサを留置し経時的に局所体温や電気抵抗値を計測し、その後の子宮回復(発情回帰)や繁殖成績との関係を明らかにする。併せて、センサにより取得されるデータと負荷物質投与による応答性を指標とした子宮修復状況の判定法の検討を行い、これらの技術を総合して、センサによる産後繁殖機能回復モニタリング手法を開発する。さらに、実規模農場において、センサによる分娩時刻及び産後生殖機能回復時期予測技術の実用性及び有効性を検証する。

 研究実施機関
  • 農研機構 畜産研究部門
  • 産業技術総合研究所 製造技術研究部門
  • 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
  • 島根県畜産技術センター

 研究成果

 (3) アニマルセンシング情報の時系列解析を基にした牛の微弱発情検知及び
   周産期疾病予防システムの開発

 
 研究テーマ内容
 牛は発情、分娩、食欲不振を伴う疾病発症などに先だって、通常行動とは異なる行動を示す場合が多い。その行動の変化を20Hzの3軸加速度センサでモニタすることにより、飼養管理者が発見するよりも早く異常を摘発して未然に対処できるようにする。これを実現するために3軸加速度センサによる牛群のモニタリングシステムを構築する。

 研究実施機関
  • 岩手大学 農学部
  • マイメディア
  • 酪農学園大学

 研究成果

2.高度飼養管理と生産病防除のための精密個体管理システムの開発
    テーマリーダー:農研機構 動物衛生研究部門 新井 鐘蔵 


 (1) 多機能型ルーメンセンサを用いた生産病の診断及び飼養管理技術の開発
 
 研究テーマ内容
 長期間ルーメン内留置が可能で、容易に経口投与が出来る小型で多機能型の無線ルーメンセンサ及び機能解析に必要な基盤技術を開発するとともに、ルーメンセンサを活用した生産病の防除技術の開発を目指す。開発を目指すセンサの主な仕様は、経口投与が可能な多機能型ルーメンセンサ(加速度、pH、温度)とし、小型サイズ(12mm×50mm程度)でルーメン液pH・温度の間欠計測とルーメン運動・流動性の連続計測、計測データの無線送信、理論端末寿命3年以上とする。ルーメン内環境での計測に最適化した完全固形式pHセンサを開発(精度は0.1~0.2程度)する。受信率95%以上、首輪中継器経由による見通し通信距離100 m以上の受信システムを開発するとともに、センサ及び首輪中継器の平均消費電力の低減化を行う。最終的には、ルーメンセンサの牛への1回投与で出荷までの期間安心してセンシングできる技術(生産者段階での実証試験で必要なセンサ性能)を構築するとともにセンサ端末の製品化を図る。また、研究全期間を通じて、コンソーシアム内の機関に対して研究に必要な多機能型ルーメンセンサを試作して必要量の提供を行うとともに、協力機関から得られたデータを基にセンサや中継器の改良と解析法の工夫を行う。
 また、加速度センサを用いたルーメン内容物の流動性評価とルーメン収縮運動の解析技術を開発することで、鼓脹症の早期検出、食滞の評価、SARAの評価等に必要な解析技術を開発する。また、ルーメンセンサの安全な経口投与法、持続的モニタリング法、無線データ解析手法の開発を進めることで、牛群に安全に適用できる無線センサ端末を用いたルーメン機能監視システムを構築する。さらに、多機能型ルーメンセンサを用いた持続的モニタリングにより牛のルーメン機能の変動と、牛への濃厚飼料多給後に生じるSARA発現・エンドトキシン等の有害物質の体内動態・諸臓器の機能障害に至る一連の病態メカニズムとの関連を解明することで、生産病の防除に必要な手技を検討する。また、センサ情報に基づいた新規薬剤の薬効評価や薬剤の組み合わせ投与の最適化を図ることで、ルーメン及び肝臓障害などの主な消化器疾病を中心とした生産病の効果的な機能改善技術を開発する。

 乳牛については、周産期や育成期におけるルーメン機能を経時的にモニタリングして、この時期におけるルーメン機能(おもに運動とpH)と飼料摂取量の特徴を明らかにするとで、ルーメン機能を妨げない飼養管理技術の開発に活用する。
初年度には、飼料構成の違い、及び給与飼料の急変が、ルーメン機能に及ぼす影響を明らかにする。また、フィステル経由で採取したルーメン内容液のpHを供試センサ計測値と比較することにより、供試センサの有効性を確認する。
2年目は、前年の内容を継続するとともに、育成牛における飼料の変更がルーメン機能に及ぼす影響を明らかにすることにより、増体の停滞を回避する飼養管理技術の開発を目指す。
 3年目以降は泌乳末期から分娩初期(周産期)における飼養管理法の違い(乾乳期間、給与飼料、産次など)がルーメン機能と摂取量に及ぼす影響を明らかにする。周産期疾病の発症が摂取量及び乳生産とともに、ルーメン機能に及ぼす影響を明らかにすることで、ルーメン機能のモニタリングによる周産期疾病の予防・予測が可能か検討する。また、育成牛における飼料の変更がルーメン機能に及ぼす影響を明らかにすることにより、増体の停滞を回避する飼養管理技術の開発を目指す。
 肉牛については、ルーメンセンサから得られる情報に基づく肥育期における精密飼養管理技術の開発を目指す。黒毛和種去勢牛にルーメンセンサを経口し、肥育期におけるルーメン機能について、センサからデータを収集する。供試牛は、一般的な肥育飼養管理である1群4頭前後の群房飼いとし、飼料の給与量と残食量は毎日、百グラム単位で精密に計測する。肥育マニュアルに基づき精密計量された飼料を供試牛に給与し、ルーメンセンサから得られたデータを収集・解析し、モニタリング基準を作成する。ビタミンA無添加飼料を給与し、黒毛和種去勢牛におけるビタミンA欠乏状態を作りだし、ビタミンA欠乏による食欲減退とルーメン機能との関係性をルーメンセンサにより得られるデータから明らかにし、ルーメン機能からビタミンA欠乏症状による食欲減退を早期にモニタリングする手法を開発する。また、濃厚飼料の増給パターンや最大給与量、粗飼料の不足給与など肥育期に想定される飼養管理状態を設定し、粗飼料の摂取不足や肥育前期における濃厚飼料増給、肥育中後期における濃厚飼料多給、食欲減退などにおけるルーメン機能の変化をルーメンセンサから得られるデータから解析し、ルーメン機能モニタリングによる高度な飼養管理技術を開発する。さらに、育成期から肥育期まで長期的なルーメン機能モニタリングを行い、枝肉格付成績との関係から生産現場において利用可能な指標とそれに基づく、効率的な飼料給与技術を開発する。
 また、計画前半ではルーメン機能と咀嚼行動の連動性の解明のためにルーメンフィステルを装着した肉牛を用いる。フィステルに接続したpH測定機によって連続してルーメン内pHを測定する。また、顎部には(独)農研機構東北農業研究センターで開発された咀嚼計(SCRUM)、腰部には加速度センサを装着し、採食、反芻と言った咀嚼行動や起立横臥をモニタリングしながら行動とルーメン機能との連動性を明らかにする。計画後半では多機能型試作ルーメンセンサによりルーメン機能をモニタリングしながら黒毛和種去勢牛を異なるルーメンpHで肥育する。異なるルーメンpHで生産された牛肉の筋肉内脂肪酸組成や香り成分などの肉質の違いについて明らかにし、ルーメン機能を利用した高品質牛肉生産技術を確立する。

 第四胃変位など生産病発症牛にみられる消化管運動の低下を検出するために、ルーメンセンサをルーメン前房、腹嚢、盲嚢及び第2胃にルーメンフィステルから留置した実験牛を用いて、薬剤により低下させた消化管運動を検出するのに最適なルーメンセンサの留置部位及び消化管運動の低下を反映する加速度センサによるルーメン運動情報の解析方法を明らかにする。また、ルーメンフィステルを装着しない一般牛への経口的な留置方法を開発する。さらに、生産病発症牛を用いて、多機能ルーメンセンサによる検査技術の有効性を、消化管運動の低下や治療効果の判定から実証・改良する。また、治療後の受胎性や乳生産など予後の生産性とルーメンセンサから得られる持続的なルーメン検査情報との関連を検討し、生産病発症牛に対する早期予後診断への応用も実証する。このことにより、生産病の病状に応じた効率的な治療が可能となる。
 さらに、体重、乳量や血液検査などから選定した生産病高リスク牛に、ルーメンセンサを留置し、持続的なルーメン検査情報からの生産病高リスク牛の早期検出法を開発・実証する。生産病高リスク牛の早期発見は生産病の発症を低減する対処を可能とする。


 研究実施機関
  • 農研機構 動物衛生研究部門
  • 産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター
  • 富士平工業
  • 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
  • 北海道立総合研究機構 畜産試験場
  • 農研機構 東北農業研究センター
  • 酪農学園 酪農学園大学

 研究成果

 (2) 体表温センサを用いた疾病診断法及び飼養管理技術の開発
 
 研究テーマ内容
 体表温センサの開発に関しては、すでに開発済みの試作型体表温センサの素材、配線、構成を改良し、長期間の使用に耐えうる改良型体表温センサを開発する。仕様は次の通り:センサ部のサイズ22mm×10mm程度,電源・演算部などの本体部のサイズ30mm×30mm程度;無線距離20m程度;理論寿命1~2年程度;温度精度±0.05℃。
正確な体表温度データを得るため、センサを簡単に、かつ確実に固定でき、さらに、体格の異なる牛にも柔軟に対応できるような装着器具を開発し、上記体表温センサを実用型として最適化し、コンソーシアム内の機関に提供する。
 牛体表温度に影響を与える諸要因の解明に関しては、まず健康牛を用いてズートロンで環境温度を人為的に変化させたときの体表温度、深部体温、血流量などを測定する。また実験的な細菌、ウイルス感染やエンドトキシン投与によって発熱状態を再現し、同様の測定を行う。これらのデータを解析し、体表温モニタリング法開発のための基礎的知見を得る。

 体表温センサに関しては、まず試験場の肉牛(黒毛和種)群(子牛、繁殖牛各10~20頭)及び乳牛(ホルスタイン種)群(子牛、育成牛、搾乳牛)各10~20頭を用いて、季節(2月、5月、8月、11月)ごとに約1ヶ月間にわたって体表温度を測定し、環境温度や直腸温度との関係について検討し、これらのデータをもとに、研究項目2(2)で行った環境温度の影響に対する補正法や体表温モニタリング技術の妥当性について実証する。また、疾病(繁殖牛の産後疾患や子牛の下痢や肺炎等)発生時における体表温度及び直腸温度など関係について検討するとともに、センサ装着牛と非装着牛の疾病発生率、治療日数を比較し、研究項目2(2)で開発された実用型センサや発熱検知システムによる疾病の早期発見効果を明らかにする。さらに、冬季の疾病発生数軽減のため、各種防寒対策をした子牛の体表温度をセンサでモニタリングすると同時に、疾病発生率、治療日数を比較し、体表温センサを用いた効果的な防寒対策技術を確立する。
 また、生産者牛群(2~4ヶ月齢子牛群、分娩後母牛など)にも試作型あるいは実用型体表温センサを継続的に装着して体表温度データを採取するとともに、臨床的な疾病の発生時あるいは体表温度が異常値を示した場合に、直腸温度測定、臨床症状の記録、血液検査(白血球数、炎症マーカー、肺炎マーカー等)などを行ってデータを蓄積する。これらを解析し、実用型体表温センサの臨床的意義や早期診断への有効性を確認する。また、センサ導入前後の治療費などの経費の比較を行うことにより、センサ導入による経済性の評価を行う。


 研究実施機関
  • 農研機構 動物衛生研究部門
  • 産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター
  • 富士平工業
  • 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
  • 北海道立総合研究機構 畜産試験場
  • 酪農学園 酪農学園大学

 研究成果

 (3) 自律神経機能の乱れからストレス状態の初期の兆候を検知する技術の開発
 
 研究テーマ内容
 尾根部腹側に長期間留置が可能な小型で尾部の血流から脈波を計測可能な新規の無線式脈波センサ及び、脈波データから自律神経機能評価を行うのに必要な技術を開発する。このため、低消費電力な脈波測定及び無線通信法を考案し、脈波センサを試作して、尾根部への装着法等を検討する。具体的には、脈波は20Hz程度の高いサンプリング頻度でデータを得る必要があるため、自律神経機能評価に必要な脈波データを得る間隔の延長、及びセンサ内での自律神経機能計算による脈波データよりもはるかに少ない情報の無線送信などの省電力化に取り組む。
 すでに確立している心電図波形からの自律神経機能評価をもとにセンサの性能評価を行う一方で、エンドトキシン(LPS)注入などの実験的なストレス負荷や、牛の飼養管理上のストレス(子牛の群管理移行ストレス等)をモデルとして、自律神経機能の乱れ-ストレス状態の初期の兆候-易感染状態(疾病に罹患しやすくなっている状態)の関連を解明することで、ストレスによって疾病にかかる前に飼養管理を改善し、日和見感染による損耗を防ぐための基礎的知見を得る。
 脈波データによる自律神経機能センサを用い、上記の実験モデルや、研究項目2(4)における実証規模農場でのデータを蓄積し、自律神経機能の異常値を検出しアラーム信号を発するための解析アルゴリズムの開発を行うことで、ストレスセンサとしての精度を高め、生産者へ供給できるレベルのストレスセンサ及び解析ソフトを確立する。

 子牛の離乳や群飼育などの環境変化によるストレスが原因と考えられる日和見感染症による損耗を防ぐために、前半では、疾病罹患の時期や罹患牛の生理学的、行動学的特徴の解析など、開発するストレスセンサの適用に資する調査を行う。
 開発された脈波データによる自律神経機能センサを用い、自律神経機能の乱れ-ストレス状態の初期の兆候-易感染状態の関連を実証規模農場で解明するとともに、ストレスセンサ確立のためのアルゴリズム設定に必要なデータの蓄積を進める。
 最終的には、開発された実用型のストレスセンサを用いることで、ストレスが原因と考えられる日和見感染症に罹患する前に飼養管理を改善する技術を開発する。また、ストレスセンサによるアニマルウェルフェアレベルの評価及びアニマルウェルフェアレベルの改善効果を検証することで、高度な飼養管理技術の開発に貢献する。

 研究実施機関
  • 農研機構 動物衛生研究部門
  • 農研機構 畜産研究部門
  • 東京大学大学院 農学生命科学研究科
  • 九州大学大学院工学研究院
  • 富士平工業
  • 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
  • 北海道立総合研究機構 畜産試験場
  • 信州大学学術研究院 農学系

 研究成果

 (4) 無線式pHセンサを用いたルーメンアシドーシスの病態解析と予防技術の開発
 
 研究テーマ内容
 岩手大学らが開発した無線式ルーメンpHセンサの改良と機能追加を行い、当該無線式pHセンサを用いた診断用アプリケーションソフトの製作を行う。次に、潜在性ルーメンアシドーシスの病態解析および予防対策の検討を行い、科学的根拠に基づいた予防対策を開発する。さらに、予防対策の効果を実験的に確認した後、野外での実証試験を行い給与飼料の改善を主体としたルーメンアシドーシス予防対策の効果を確認する。
無線式pHセンサは無線状態が悪い場合でもデータ受信率が向上するよう改良し、診断用アプリケーションはルーメンアシドーシス発生を迅速に摘発できるようなソフト開発を行う。
 次に、1年目と2年目に無線式pHセンサを普及・実用化させる際に必要なルーメンアシドーシスの病態と予防対策を検討する。病態の検討では、特にルーメン液のpHとエンドトキシン産生との関連性や、ルーメンエンドトキシンの血中移行と代謝および免疫機能に及ぼす影響について、6-8頭の実験牛を用いて詳細に検討し、さらに、10-15頭の野外の乳牛を用いて検証する。また、ルーメン液pHの変化と関連した飼養管理法の改善やある種の酵母・菌体製剤などの飼料添加物を活用したルーメンアシドーシスの予防効果についても、6-8頭の実験牛や10-15頭の野外の乳牛を用いて検討する。
 さらに、上記試験の結果に基づいて、2年目までに効果的なルーメンアシドーシス予防法を開発し、その効果を10-15頭の野外の周産期乳牛を用いて検証する。これら検証結果から、乳牛の分娩後におけるルーメン液pHの変動と生産病発生の関係、ルーメン液pHの急激な変動を軽減する方法を検討する。また、ルーメンアシドーシスの予防法を開発した後、飼料給与法の異なる野外の酪農家(12戸程度)の50頭程度を対象として、周産期における飼養管理状況とルーメン液pH変動の実態を検証し、予防対策の有効性を確認する。
 最後に、1年目と2年目に無線式pHセンサの商品化に向けた市場ニーズ調査を行い、無線式pHセンサの商品化の可否、および商品化のための課題や市場性評価等についてまとめる。

 研究実施機関
  • 岩手大学 農学部
  • 農研機構 畜産研究部門
  • 兵庫県立農林水産技術総合センター 淡路農業技術センター
  • 山形東亜DKK
  • 日本全薬工業

 研究成果
3.次世代精密家畜個体管理システムの実現に向けた調査研究
    テーマリーダー:マイクロマシンセンター 武田 宗久


 (1) 家畜管理システムに必要なセンサの現状と動向並びにビジネスモデルの調査
 
 研究テーマ内容
 ユーザである各地域の繁殖農家及び肥育農家へのアンケートやヒアリング並びに文献や国内外の学会、展示会等の調査により家畜個体管理の現状と課題及びビジネスモデル並びに次世代精密家畜個体管理システムへの要望を調査する。また、センサメーカ等へのアンケートやヒアリング並びに文献や国内外の学会、展示会等の調査により、家畜個体管理システムに必要なセンサの現状及び動向を把握し、これらを研究開発にフィードバックするとともに、普及のためのビジネスモデルを構築する。

 研究実施機関
  • マイクロマシンセンター

 研究成果

 (2) 生体センシング技術を活用した次世代家畜個体管理マニュアルの作成
 
 研究テーマ内容
 得られた研究成果をICTに詳しくない繁殖農家や肥育農家に普及させるために、センサや機器の設置・管理維持方法、データの収集、蓄積、解析方法ならびにそれを用いた家畜個体の管理・運用方法(授精適期判定技術、ルーメン機能解析技術、体表温度測定技術、周産期管理技術、産後生殖機能回復モニタリング技術、飼養管理適正化技術、自律神経機能評価技術、ストレス状態の初期兆候検知技術等)に関して、分かりやすいマニュアルを作成する。

 研究実施機関
  • 農研機構 動物衛生研究部門
  • 農研機構 畜産研究部門
  • 産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター
  • 富士平工業
  • マイクロマシンセンター
 
 
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